検証 verification
このバイクのラインが浮かんできたのは、前作オロングボウの製作中でした。
錆びない素材でバイクを造りたい。
それも思いきり手の込んだ。一流の職人がため息をつき考え込んでしまいそうな。
今まで100%の達成感を感じる事が出来なかった自分自身への挑戦状。
最後の一台になっても構わない。
そんな訳でこのバイクのコンセプトをまとめてみました。
1、素材は錆びる事の無い金属を使う。仕上がりが美しいもの。
2、必要部品以外は全てコンパクトにフレーム内に収納する。
3、モノコックフレームで構想を練る。
4、直線部分をフレームに取り込まない(終始、湾曲で製作)
5、登録し走行可能状態にし普段の足とする。
1、素材は錆びる事の無い金属を使う。
現実問題として、使用素材は A、アルミ B、ステンレススチール C、チタン の三種でしょう。
材料が手頃で加工性も良く、強度も得られ実績も有るアルミは魅力的です。
しかし先に言った「一流の職人がため息をつき考え込んでしまいそう・・・・・」は先ず無理な話です。
金属自身に新鮮さが無い。で、却下!
残るB,C,について検証です。
Bのステンレススチールの問題点はクラック(割れ)が入りやすいと言う事と加工性が悪い、それに溶接時の歪が大きい。
Cのチタンは高価で加工性が悪くヤング率が低いです。(ヤング率とは若さの単位ではありません)
私はチタンについての知識が乏しいので、メーカーサイドに目的を告げ、助言を求めました。
そして帰ってきた答えがこうでした。
チタンをバイクフレームにとのことですが
@比重は鉄,SUSの6割と軽量ですが
Aヤング率 は1/2 つまり剛性が低く
同じ力に対し変形量が倍になります。
@Aを考慮してフレームの断面形状を工夫する必要があります。
○○○のレーシングバイクは軽量化の目的でチタン部品をあらゆる所に使用していますが
上記の理由から
フレームはアルミ合金にしているようです。
また溶接、熱加工では不活性ガス(Ar等)での遮蔽が必須です。
遮蔽が無いと400℃を越えたところで酸化が進んで硬くなり、衝撃に対して大変脆くなります。
シールド設備が無いとお勧めできません。
遮蔽ができれば
ステンレスや鉄のように温度による変態は無いので
結晶粒の粗大化だけ気をつければOKです。
チタンの溶接についてはそう難しいものでも無い様で、アルミよりはスチールに近いようです。
溶接機もTigで対応でき、製作は可能です。
チタンの場合重要なのは、本文にもあるようにバックシールが必要不可欠ということです。
バックシールとは溶接部分の裏側にもガスシールドが必要な訳です。
知ってのとおりスチール系やアルミ系の溶接は表面のシールドで完了できます。
*経験から言うと容器物はバックシールしたほうが裏面も安定しますが、事実上使用範囲だということです。
例えば、チタンの場合はスチールの箱の中に石綿やグラスウールを敷きます。
溶接部材をウールの上に置き、アルゴンガスをスチールケースの中に放出したままで溶接します。
アルゴンガスはウールの中でかくはんされ、ケースの中に留まりやすくなるのです。
そうすることによって溶接部の裏側にもシ−ルドガスが供給される訳です。
サンドブラストのケース内にアルゴンガスを供給し溶接するのも良いかもしれません。
高価な素材で高価なガスを湯水のごとく使用するのは私には不向きです。
まして私の場合フレームからの製作になるので、フレーム全てが収納でき、尚且つガスシールドするとなると
結構大変です。よって却下!
そして残ったステンレス。この素材の問題は、応力に対しての割れが発生しやすく、非常に加工しにくいと言う事です。
トラックローリーのサブバンパーは確かスチールで4ミリ以上の厚みが必要ですが、ステンレスで製作すれば厚みは半分の2ミリで強度が取れます。
感覚でも標準スチールの倍くらいの加工性だと思ってもらえれば感じが掴めるでしょうか。
すなわち1,2ミリで燃料タンクを造った事が有る人ならば2,4ミリくらいの感覚だと言う事です。
ならばステンレスの素材を0,6ミリで造れば良いと思うでしょうが、そんな事をするとたまちステンレスは割れてしまいます。
ならステンレスも却下・・・・・・・。って、それじゃ選択金属がなくなってしまいます。
ここは金額、加工性の悪さ、ポリッシュの美しさを考慮してステンレスに決定。(何で加工性の悪さを考慮する?)
2、必要部品以外は全てコンパクトにフレーム内に収納する
収納と言っても使い古された手法、配線やワイヤー周りでは止まりません。
もっと突っ込んだ所を考えています。(って言うかやります。)
勿論、配線、ワイヤー類、パイプ周りは当たり前!マフラーやオイルタンクもフレーム内に収納するつもりです。
もう少し細かく言うと、フットブレーキ周りを想像してください。
フォワードコントロールを例にとると、必要な部分はペグだけです。
フォワードコントロールの本体取り付けプレート及びペグへ連結されるアーム類、マスターシリンダーにブレーキの
オイルタンクは必要ありません。全て収納するつもりです。
機能部品としてはペグだけが表面に出ていれば、それ以外は表に出しておく必要はなのです。
どうです良さげでしょう?
バイクには共通していますがボルトの存在や、ナットの頭も排除する方向です。
それぞれの部品がラインの中に溶け込んでいるのに、ボルトで邪魔するわけにはいきませんから。
3、モノコックフレームで構想を練る
基本理念は自然(亜熱帯植物の)曲線を取り入れ、直線を含まない。
リアショックなどフレーム自身が包み込み、部品から部品の差別化を無くす。それすらフレームの一部分とするように。
燃料タンクにフェンダーも誇張する事無くラインに溶け込み、それらのパーツはフレームの強度に貢献し機能を果たす。
フレームの要所に空洞も設け曲線を三次元化する。(こおゆう部位が夜間照明に照らされると非常に綺麗)
網が掛かったように。あるいは粘膜を引き裂いたような曲線。
4、直線部分をフレームに取り込まない(終始、湾曲で製作)
先に触れたが、自然曲線の中ではむしろ「直線」のほうが異質に見える。
創造された形にはそれなりの理由があり答えが有る。
厳しい自然環境で生み出された造形は無駄が無く合理的で、個人的にも最強の構造物と感じている。
それは植物の造形だったり骨格の成り立ち、深海魚の姿だったりする。
私はステンレスで造られたフレームやタンクをかなりの数見てきた。
修理と言う職業柄それらを見たり直してきた経験で一つの答えが出た。
硬い素材に直線構造物は不向きだということだ。
直線構造物はどこかしらで集合しなくてはならない。集合部分では角度が発生し、角度は力の溜まる原因となる。
曲線は力を溜める事無く尚且つ、集中させる事も無いのだ。
私の構想は絶対量産できない構造物だが、同じ答えを導いた人は少なくないだろう。
OK!同じ答えを導き出した貴方に代り私が造りましょう。
5、登録し走行可能状態にし普段の足とする。
これが最も難しかったりして。まっ、思う事はニ、三あるので完成後がんばって見ます。
勿論、最後まで掲載いたしますのでお楽しみにです。
珍しく乗るために造るバイクですから、私も非常に楽しみにしています。
次回はモノコックフレームという性質上バックパネルの製作か
スケッチの披露となるもようです。
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