だいたい私、考え事をするときは風呂の中なんです。
と、言ってもカラスのぎょうずいなもんで考える時間と言ってもほんの数分なんですが。
バイク、パーツのデザインなんかもここで生まれるわけですが面白い事に気が付きました。
カテゴリーの中にもあるんですが「イングリッシュ ホイール」なる工具を取り上げているでしょう。
この工具は名前の通り日本の工具では無いですね。
アームの先端に二個のローラーが上下に配置され、その隙間に鉄板を差込み圧延してゆきます。
ここで肝心な事は上下ローラーの寸法が違っていることで、
この誤差によって鋼板が微妙なアールを保ちながら伸びてゆくわけです。
作業手順は鋼板を裁断します。裁断された鋼板の「へり」を荒出しハンマーであらかじめ伸ばしておきます。
そして「イングリッシュ ホイール」に差込み全体的に伸ばします。
それではこの機械が無い当時、昔の日本の職人はどうやっていたんでしょう?
これについて私も調べたわけでもないので、何処まで正確に説明できるか自信がありませんが、思うにこうでしょう。
先ずフラットフェンダーを造ったとしましょう。
私自身、何枚か造りましたが同じ作業で、フェンダーと同じアールの「ジグ」を造ります。
「ジグ」に鉄板を差込み耳を3センチほど90度に曲げ角を潰します。
角の潰れた鉄板は少々アールが出ます。
これを繰り返して整形してゆきます。
とてつもなく気の遠くなる作業です。
私は日本に「ジャパニーズ ホイール」が無い理由が分かりかけてきました。
皆さんも知っての通り日本は資源の乏しい国です。
鋼材もしかり有名な日本刀も背の部分と刃の部分とは材料が違い、背の部分で硬い刃の部分を包み込んでいます。
もともと諸外国は良質の鋼材が採取され、鋼板を伸ばすだけの作業であっても(鉄板は伸ばせばもろくなります)
理想の硬度が得られたのでしょう。
しかし日本では、だだでさえ強度の出ない鋼板を硬くするにはどうしたら良いのか、
その答えは熱にあります。
鋼板は熱を入れハンマーで叩くと組織が潰れます。
組織の潰れた鋼板は非常に硬くなるのです。
日本人は加工で鋼板を硬くする術を覚えたので「伸ばす」作業は必要なかったのでしょう。
西洋は「伸ばしてゆく板金」に対して、日本は「縮める板金」で硬度を得たのです。
日本の職人に敬意を表します。
スタートラインから遥か後方から走り、ゴールラインでは負けず劣らず立派なものです。
なら、この日本に職人と呼べる人がはたして何人くらい残っているのでしょう。
貴方の身近に職人は居ますか?
あるユーザーが「カワサキZ400(懐かしい〜)のキャストホイールのパターンで
250のタイヤが履きたい」と言った人が居ます。
説明すればキャストホイールのパターン部を切り取り、リムに溶接します。
私は実物を見ました。
本体とリム部、それに溶接部は完璧なポリッシュが掛けられ、若干の色の違いはあるものの見事な仕事でした。
残念ながらそれはドイツのビルダーによる仕事であり期待していた答えではありませんでした。
作業を行ったショップと話す機会に恵まれたのでその辺の話を率直に社長に尋ねてみると、
金額的にドイツの方が少し安かったようです。
私は、「日本ではあのような作業を引き受ける所はもう無いんですかね〜」と言うと
社長は「いやいや、日本でも間違いなく遣って退ける職人は居る!
しかし日本のユーザーにそれを理解できる人が居なくなったんや」と。
優れた職人は、あらかじめそこに居るもんじゃなくユーザー自身が育ててゆくものなのですよ。
あの作業を日本人が行ったとしたらアルミの色の違いに気付いた事でしょう。
昔、車の外装が全て木で製作されていた事実を何人の人が知っているでしょう。
そして未だに外装を木で仕上げられる職人が何人いるのでしょう。
しかしそれを理解できるユーザーが居なくなったから良質の職人は必要なくなったのです。
無関心な人は「職人が減った」と、口々に言います。
私から言わせれば「職人の仕事を理解する人が減ったな」が、正解です。
そして日本のレベルまでおおきく後退してしまいそうな不安で気が重いです。
職人はユーザーが育てるものです。
職人は更に技術の習得に励みユーザーは感銘を受け、それを目指す若者が現れます。
気の抜けたユーザーは職人を殺します。
私もイングリシュホイールに鉄板を差込み、前後に引くたび軽い屈辱を感じます。
只言える事は、屈辱を感じ取れる間は私も救われているのでしょう。
おっと、ぼちぼちのぼせてきたのでそろそろ上がります。
そうそう、日本の物造りの将来は貴方自身のさじ加減ひとつなんですよ!
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