名のあるお方は一度や二度耳にしたのではないか「ブレーキ試験」

いくら調べても出てこなかったこの「ブレーキ試験」のレポートとあいなった。

ブレーキ試験を終え先ず思ったことは、”造れるからお次はブレーキ試験”ではなく、
”ブレーキ試験に目途がついたから造ろう”が正解だろう。

それほど造ることはたやすく、ブレーキ試験は厳格なのだ。

造ることにハードルを感じているようでは、ブレーキ試験は合格しやしませんよ。


簡単に今回ブレーキ試験を受けるきっかけを説明しておこう。

大阪のショップ モト エクスライドから、カワサキZZR1400のトライク制作の依頼が入った。
この時点でブレーキ試験の心配も多少は感じていたものの、いつもの調子で乗り越えられるものとタカをくくっていた。

トライク制作の過程は後日として、にわかにブレーキ試験が現実的な問題として目の前に現れたわけだ。



排気量は1400cc。順序としては自動車検査登録事務所にて登録するための手順を聞く。
なにはともあれ、ブレーキ試験にて数値計測を指定された。

輸入車の登録時には事前審査なるものがあり、車両の三面写真。
製造証明書、年式証明やタイトルなどの書類を要求される。

今回はそれ以前にブレーキ試験を要求された訳だ。


ブレーキ試験を実施しているのが財団法人 日本自動車研究所 JARI 。(以下JARIと記載)
早速JARIに連絡を取りおおむねの流れをお聞きした。

試験は旧試験と新試験の判断。
試験項目の指定。
おおむねトライクの場合試験項目からして、旧試験が85万円。新試験が119万円です。
業者間では200万円がブレーキ試験の相場ですが、私はこの金額が高額とは思っていません。

試験車両は試験日の一週間前にJARIに持ち込まなくてはなりません。
所在地が兵庫県の私であっても、車両持ち込み後にトンボ返りで帰るのは厳しい状況です。



これが九州や北海道となればどうでしょう。
車両を搬入後に数日後、さらに同じことを繰り返すのですから、
考えたくもないお話です。


まず検査は旧試験方式なのか新試験方式なのか?
検査の項目を自動車検査登録事務所に仰ぐ。

で、またまた自動車検査登録事務所に指示を仰ぐが、担当検査官は専属の人間ではなく、
検査官の職をこなしながらの担当とあって、なかなか空き時間が取れない状態だ。



検査項目は4つ

1)常温時制動試験

2)湿潤時制動試験

3)フェード試験

4)駐車時性能試験


ここで問題が発生した。
一概には当てはまらないのだが、西暦1999年の自動二輪車はブレーキ試験の要求はなかった。

2000年から旧基準のブレーキ試験が実施され、これが2009年まで継続する。
自動二輪とトライクとのカテゴリー違いはあるものの、トライクの改造が新規となれば現行の新基準のブレーキ試験が適用される。

そうこうしている間にJARIから連絡が入り、搬入された車両のブレーキキャリパーから
ブレーキが漏れているとのこと。

更に、新基準のブレーキ試験ならば、全コントロールブレーキシステム制動試験と、
ブレーキパット摩耗試験が追加されるとのこと。

全コントロールブレーキシステム制動試験ではブレーキレバーとブレーキペダルそれぞれ
単体で前後のブレーキ性能が要求される。
これは車のブレーキ操作と同じ機能である。

この連絡が入ったのが試験の前々日。明日にはJARI所在地の茨城県に出発
しなくてはならないので、上記の問題は直ぐにも解決しなくてはならない状況。

私は自動車検査登録事務所に連絡を取り、旧試験か新試験かの状況判断を委ねた。
その間に旧試験の場合ならば、漏れていることもありブレーキキャリパーの交換も視野に入れ、キャリパーの確保が必要。

新試験ならばスクラップ屋さんにでも行って、車のブレーキシステムを調達し、9時間ほどの
道のりを走った後に、車のブレーキシステムをその日のうちに取り付け
機能させなくてはならない。



後にも先にも時間がないため、愛知県のスズキ&アソシエイツに電話を入れ、ブレーキ キャリパー2個の在庫を確認。
現車のブレーキキャリパーはJARIに持ち込まれているために、寸法確認ができない。

トライクキットがアメリカ製であるため、キャリパーもミリ基準は取り付け不可能だと踏んだ。

スクラップ屋さんにも連絡を入れ軽トラックのブレーキ関係が生きているので、これを使えばどうかと。
ただ、倍力装置の取り付けが現地でぶっつけ本番となる。

でないと、契約した119万円は泡と消えてしまう。


自動車検査登録事務所から連絡が入った。
旧試験で間違いないとのこと。

これで一段落。安心はできないが、旧基準の対応に専念できる。
スズキ&アソシエイツは愛知県にあるので、途中で立ち寄りキャリパーを受け取ることができる。

無事ブレーキキャリパーを確保し、今月二回目の茨城県入りである。
朝4時50分に家を出て、現地は17時。
あたりは暗くこれからブレーキキャリパーの交換作業が待っている訳だ。

それも、付くか付かないのか?分からないキャリパーを持って。



タイヤを取り外し、ブレーキキャリパーを伺う。
ピストンからの液漏れ。キットに組まれている”DNA”と言うメーカーのブレーキキャリパーなのだが、
実はこのブレーキキャリパーは以前も液漏れを起こしていてこれで二度目である。

新しいブレーキキャリパーを宛がうと、取り付け寸法は問題ない。ドンピシャである。
そのまま組んでみると、片方のパットにディスクが干渉している。

後方から中心を確認すると、ディスク中心とキャリパー中心がずれて、ブレーキパットがデスクを
押し付けている状態だ。
このまま取り付けるとパットが引きずって熱を持ち、ブレーキがロックしてしまう。

中心を調整するための調整用シムが入っているものの、シム調整がプラス調整に対し
現状はマイナス調整。言ってしまえばブレーキキャリパーを削らなくてはならないのだ。

ここで断念すると明日の試験は中止。119万円がパー。いやいや旧試験なので
85万円がパーだ。

冷静になって周りを見渡す。

ボール盤がある。クロスバイスがある。
なんとドリルのキリケースに、6.5ミリのエンドミルが一本ある。

ボール盤にクロスバイスをセット。ボール盤テーブルのゼロ点を調整してみる。
バイスにブレーキキャリパーを咥え、二か所の取り付け穴をスライドして高さ調整すると、
手前穴と奥の穴とは0.2ミリほどの誤差が認められる。

ボール盤テーブルを上方に押し上げ、スライド部分に生じた隙間にちぎった紙を二枚ほど差し込み
もう一度ゼロ点調整してみると高さが均一になった。

テーブルをロックし、マジックで印を入れていたブレーキキャリパーの当たり面を、
目測0.5ミリ削り組み込み、引きずりを解消するのに成功した。



これでとりあえずは明日の準備ができた。
ツイているのかツイてなかったのか?よく分からない一日だったが、結果オーライ。

行くも帰るも明日に委ねよう。


 

試験当日、かくレバーとペダルの数値取り。
みなさん考えるに、ブレーキの利き具合はマスターシリンダー吐出力と面積。キャリパーピストン面積と、
キャリパー個数にパット面積。いいとこブレーキホースの膨らみが、初期制動に影響を及ぼすくらいに考えているでしょ。
いや私もそうでした。

何キロかスピードを出して、ポールの位置から次のポールまでに止まってください。
くらいの試験だと思っているでしょう。とんでもない話です。

レバーやペダルに掛かる力に制限があり、制限内でブレーキを作動させる必要があるのですよ。

例えば10sの力でレバーを握り2Nの力が立ちタイヤがロックしたとしましょう。
試験に合格したいと2Nを出すために15sや20sも力をかけてはならないのです。

それは女性であっても、年配者でも安全に2N出せる機構でなければならないってことです。

 


数値は微妙なところで、常温時制動試験、湿潤時制動試験、はパスしてもフェード試験が
この数値では基準を得ることは難しいでしょう。とのこと。

これをクリアーするには、ローターの大口径化。ブレーキキャリパーの変更。
ブレーキパットをもっと食いつきの良いものに取り換える。

どれも当日できそうな話ではありません。
新基準の試験を想定していたので、明日もコースは確保しているとのこと。

しかしその場合、85万円の試験費用は119万円になる。30万円プラス。
日を替えると話は振り出しで更なる試験費用が必要になる。簡単に言えば85万円×2ってわけだ。

 
(車速はGPSにて算出される)


踏み下ろす基準は何で取るんですか。
ペダル上にセンサーを置いてセンサーごと踏みます。

ブレーキ圧力はマスターシリンダーから分岐しているセンサーが読み取ります。
じゃ、ペダルの位置を替えると踏み下ろす力は減りますね。

どれくらいペダルの力を軽減すれば試験にパスしそうですか?
現状100%として、40%軽減できればパスしそうです。ブレーキ基準にペダルを踏み下ろす距離は設定されていないので、
ペダルの延長は問題ありません。しかし写真撮影後に自動車検査登録事務所に提出しますが。

それじゃフロントのブレーキ性能を午前中までにお願いできないでしょうか。
昼食の間に、後輪ブレーキの対処を行います。

この状況のなか試験は開始された。

 
(ライダーはモトエクスライド代表の松山氏。)

私は次のトラブルを考えていた。
性格的にはポジティブなのだが、機構に関してはネガティブに考えるべきだ。

まして失敗できない一発勝負。考えすぎって事は考えられない。
ネガティブの下積みが重なってポジティブは支えられていることを私は知っている。

持っている引出をフル活用し、次の対処も考えておくのがプロ。
素人とプロの差は作業時間の差。加えてどれほどの引出を持っているかだ。

JARIのスタッフも協力してもらい、鋼材の支給も受けた。
何せホームセンターまで片道20〜30分掛かるらしい。またペダルに使えそうな鋼材で踏み下ろしに
耐えられるものと言えば、4ミリ以上で幅25ミリ以上。それを縦に使わなくては踏込に耐えられない。

バイスで鋼材を曲げ、6ミリのボルト二本で固定しペダルの遊びを殺すために溶接を施した。

フロントの試験を終え午後からは後輪へと試験は移る。



1)常温時制動試験

走行ブレーキ使用し、ブレーキディスク温度を110℃〜132℃にする。
100qで走行し50±3daNの踏力で制動力を測定


 

2)湿潤時制動試験

右上の写真の銅管から水が排出され、その状態からの制動力を測定する。


3)フェード試験

ディスク温度の上昇を確認後、指定速度まで達した後にブレーキング。
この動作を11回繰り返し、直後の油圧が上昇していないか測定。

今回の試験で最も過酷な試験。
幾つかの不安を抱えたまま、試験は最後まで無事終了してくれた。

試験管から終わりましたね。の労いも、微笑む気力もなく下を向き肩をなでおろした。


 

4)駐車時性能試験

駐車時性能試験は積車を用い実施された。確か角度は18度。
この試験は下り上り坂を想定しての試験だが、駐車レバーの引きトルクも測定していた。

全ての試験に言えるが、力任せに効けばよいというものではないのだ。
その証拠に、引きトルクがギリギリ基準内だったのに少々ヒヤリとしました。

今回は旧基準での試験だったので止まれば合格だが、
新基準では静止後に、5分間の計測があるようだ。

新基準ではブレーキパットの摩耗率が計算され、摩耗によるピストンの突き出し量を計算。
突き出し量から油量の計算を経てリザーバータンクの油量が足りているのか?
も考慮に入れる。

恐らく、新基準ではバイク用のタンクでは合格できないかも知れませんね。



試験を終えた朝の朝食が、どれほど美味かったことか。

 

今年、何回目のスカイツリーだっけ。
「もう二度とここには来ることはないでしょうね。」の言葉に検査官は「そお言っている人の
ほとんどは二回目も来ますね」って言葉が頭に浮かんだ。

そうそう、地方のコンビニはよく目にするが、この「Coco!」ってのも地元じゃ
有名なコンビニなんでしょうね。


*試験の流れは大まかなものです。これが全てとは思わないでください。
試験の詳細が知りたい方は、上記各試験項目を検索することで、詳細がPDFで確認できます。

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